アッキーの視覚の世界当てにならない視覚学{視覚の記憶力}}

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視覚の記憶力
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  富士山を描けましたか?

  では、先に進みます。皆様が描かれた富士山は、どんな富士山になりましたか?
  先ず、富士山を見てみましょう。

  答えを先に申しましょう。問題となるのは、富士山の輪郭線の「傾き」です。

  富士山は、誰が撮っても、誰が描いても絵になります。素敵な形をした山ですね! ここで、皆様が描かれた富士山と写真とを比べてみて下さい。一目瞭然! かなりの確率で、皆様の描かれた富士山の傾斜は険し過ぎているはずです。

  実は富士山は紡錘形と言われてますが、自然が創り出した物ですから完全な軸対象形とはいきません。東西に見た富士山の最大傾斜角は30度程度、南北に見た場合には40度程度です。特に小富士が見える方向だと、かなり左右でいびつに見えます。
  ここで、この小富士があるからこそ美しいと言う意見もあれば、小富士が富士山の美しさを台無しにしていると言う意見もあるでしょう。そのどちらが正しいかは論じる事はできないので、ここでは追求しません。
  また、見る方角によってはかなり左右いびつに見えるのですが、それも脇に置いておきましょう。(もし、左右いびつに描かれた方がいらっしゃいましたら、きっと真面目に観察された方か、恐ろしい美術センスと視覚記憶力をお持ちの方です。)

  一方、皆様の描かれた富士山の傾斜角‥‥頂上付近の最大傾斜角は、果たしてどれ ぐらいでしょうか? 恐らく、平均して45度、場合によっては60度ぐらいではありませんか?

  ここで、言いたい事は2点あります。

1)記憶力ってシロモノは、案外当てにならないって事。
2)そして本物と違う形でも、ものによっては本物として無理無く認識してしまう事。
  この2点は、人間の大脳‥‥視覚の特性を如実に物語っています。
  以降、視覚をどうやって人間は構築していくのか、視覚がいかに不安定なものであるか、三原色とは何か‥‥視覚とは何かを通して、美しい物とは何か、を論じていきたいと思います。今回は、その頭出しなのです。

  記憶力が当てにならない、と申しましたが、正確には、「見えていても見てない限り思えていない」と申すべきでしょう。英語では、見えている事をsee、見ている事をwatchまたはlookと、別の単語を当てています。日本語は同じ漢字なので、日本人が両者の違いを気にする機会が少ないと思います。別の言い方では、「注意力の隙間」等とも言われます。
  富士は日本一の山♪ 日本人であれば、その勇士に埃を持って、その傾斜角は本物よりも大きく描いてしまうのではないでしょうか? そしてそれが当然であるものと錯覚してしまっても、誰が非難できるでしょう。思う事とは、「思い込んでいる」事なのです。
  面白いですよね。本物と違っても、ある特徴またはある共通概念を満たしていれば、そう見えてしまうんです。これを延長すると、見ている物=そう見たい物、と言う図式が出来上がります。似顔絵はこの原理です。幽霊も同様です。

  視覚って、実はいい加減なものであり、一方でいい加減であっても大きな問題がない事が多いのです。ただ、このいい加減さが原因で、大事故が発生する事も実社会ではあります。産業安全衛生を論じる場合には、視覚の心理学を通らざるを得ません。
  因みに、富岳36景で有名な葛飾北斎は、富士山の最大傾斜角を45度以上にしました。彼が描くと、錯覚、ではなく、誇張、と言わなければならないでしょうね。

参考文献/菱田博俊・他2名:「機械デザイン」、コロナ社、p.31。

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<1>2006.12.20